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スタッフコラム-vol.6

大変だったけど、面白かったアイアンリーガー

インタビュー:南 雅彦  -後編-

熱いスタッフが熱いハートで作り上げた
熱血SFスポーツアニメ「疾風!アイアンリーガー」
あのとき受け取った熱さは、やはり本物だったのだ!

『疾風!アイアンリーガー』の制作現場で思い出深いことなどありますか?

うーん。作画スタッフからちょっとした苦情がきたんです。「アイアンリーガー」ってメカばかりじゃないですか。それでいてキャラクター的な演技をしてますよね。それで作画スタッフに渡すときには「キャラだ」と言って渡すと「これはメカですよ」ってね。これは自分が初めて制作進行をやった『超力ロボ ガラット』でも同じことがあったんですよ(笑)。変形する前のSD体型のロボットが主人公たちと一緒に行動してるんだけど、線が多くて「これはキャラじゃなくてメカだよ」と作画スタッフからよく言われた。実際、線が多いし、色数も多いしで「ロボットに動きの激しいスポーツなんてさせるなよ」と、現場からはよく言われたな(笑)。

「アイアンリーガー」では試合での敵味方の各リーガーの位置関係がハッキリしていて、試合運びがわかりやすかったという印象が強いのですが。

そこはサンライズの演出陣の力ですね。というか、そういう位置関係がハッキリしていないとサンライズのスタッフは気がすまないところがあるんですよ(笑)。他だと飛ばしてしまうところかもしれないのですが。でも、それにより観ている側もいっそう試合にのめり込んで観られたんじゃないかな。

キャストに関しては?

とても個性的な方々でしたね(笑)。主役7人のうち最後に入ったGZ役の堀之紀さんが本当にいい方で。大体、全員そろうのが12話とは、構成として遅すぎですね(笑)。せめて5話くらいで揃えなきゃ。堀さんが出番はまだかと心配するのもわかります(笑)。それで堀さんは堀さんで参加してきたら皆を仕切ってね、ただでさえ飲兵衛が多いのに「南さん、オレたち大人なんですから温泉とか行きましょうよ」ってね、で、この温泉旅行がこれのどこが大人なんだろうかという大宴会になったのでしたよ。
とりあえず「アイアンリーガー」のキャストに関しては「とても暑苦しい」といった印象ですね(笑)。

なるほど(笑)。「暑い」つながりで「熱い必殺技」についてお聞きしたいのですが、漫画家の島本和彦さんが必殺技などの協力をしていらっしゃいますが、どのような経緯で参加されたのでしょうか?

実は大学の同級生なんですよ。ロボットもので必殺技的な演出をしたい。するとアイデアマンが欲しいなあ、という流れで「島本、描いてよ」と。いっぱい描かせましたね、もう覚えていないくらい(笑)。

セルビデオの特典として島本版オープニングがつきましたね。

自分は、とても気に入ってるんですけどね。女性ファンには余り評判がよくない。なぜか島本は女性ウケが弱いんだ(笑)。濃いんだな。自分は気に入っていて好きなんですけどね。

振り返ってみると南さんにとって『疾風!アイアンリーガー』はどういう印象の作品ですか?

どうかな。今となっては楽しかった、面白かった、そんな印象かな。自由にやらせてもらった作品ですね。
スタッフ的にもバランスのとれた作品だったというのは言えるでしょうね。シリーズ構成で鈴木良武さん、監督にアミノテツローさん、メカに大河原邦男さん、キャラクターに二宮常雄さんとベテランがそろい、現場では若手が熱さをぶつけ合うという、そういう作品でしたよ。
スタジオライブの神志那弘志くんがね「こんな熱い作品ならやらせろ」と後半で加わってくれたのを覚えている。彼はいまだに「また、アイアンリーガーみたいなのやりましょうよ!」って言ってくれる。野球少年の血が騒ぐというのもあるんだろうけど(笑)。
織田美浩くんたち若手の演出陣も必殺技を考えてくれたりして頑張っていましたね。
実はね、CM開けのアイキャッチで「デンデケ、デンデケ、デン、アイアンリーガー!」とタイトルロゴが出るところは自分が作ったんだよね。当時はCGなんてないから、アミノさんに時間を計ってもらって、定規とマジックで「シュ、シュ……」と線を引いていったんですよ。あれ、格好いいでしょ。線を引いていて最初は調子よかったんだけど、段々疲れてきて「やらなきゃよかった」とは思いましたが(笑)。
色んな意味で愛着のある作品ですね。つくっていて大変だったけど、面白かった作品でした。

2002年6月17日(月)取材。

プロフィール

南 雅彦
1961年生まれ。三重県生まれ。サンライズで『機動武闘伝Gガンダム』『天空のエスカフローネ』『カウボーイビバップ』などのプロデューサーを担当。
'98年10月独立し、制作会社「ボンズ」を設立。『WOLF'S RAIN』『鋼の錬金術師』『クラウ ファントムメモリー』など話題作を手がけている。