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スタッフコラム-vol.4

アイアンリーガーは自分の原点

インタビュー:中山浩太郎  -後編-

熱いスタッフが熱いハートで作り上げた
熱血SFスポーツアニメ「疾風!アイアンリーガー」
あのとき受け取った熱さは、やはり本物だったのだ!

競技場など、とても凝っているという印象の背景なんですが、背景のアイデアはどなたが?

中山競技場に関しては、最初は競技場であれば何でも良いといった状態だったんですが、アミノさんか、自分か? スタジオ・イースターの東潤一さんだったかも知れませんが、帽子の形でいこう、となったんです。メインがスタジアムが野球帽だったら、テキサスはテンガロンハットの競技場にしようという具合ですね。
ゴールキーパーを落とすダスターや、審判メカなんかのアイデアは、ほとんどアミノさんが作っていましたね。
全体の世界観では、僕の方からアミノ監督に「こういうのがやりたいんです」と強く推したのが「小松崎茂」さんの世界なんです。あまりシビアな未来感でなく、夢の部分がある未来感にしていこうと。実は小松崎さんのお描きになった空母の上物をイメージした空港などが登場しています(笑)。
背景ではひとつ苦労したところがあって、競技場とアイアンリーガーの対比のスケール感がわかりにくいんですよ。サッカーなり野球の競技場に比べてアイアンリーガーたちはどのくらいの大きさなのかが把握しにくい、特にシルバーキャッスルの練習場の壁の高さなどは、回によってバラついてしまっていたんです。こまっていたらアミノ監督が、この高さに統一しよう、とCGのシュミレーション画面を作って下さったこともありましたね。

そのほか、印象に残っていることは?

中山後半になるにしたがって、やはり敵も強力にしなければならない。もうこれ以上のなにがスゴイものってなんでしょう? とアミノ監督に相談したら「遮光器土偶だな」とシャーキードーグが誕生した。
それと開始した当初にアミノ監督が出した作画の「お約束」として、初期はボールをあまり歪ませないようにしようというのがあったんです。後半に登場するスゴイ技を表現するのに、最初から歪みで迫力のあるボールを描いていたら、後半で迫力を演出する方法が減ってしまうからなんですけど、前半ではどうやって迫力を出せばいいんだと作画の現場は大変でしたね。
また競技場の時にもふれましたがスケール感の部分では苦労していますね。統一がとれていてば良いかといえば、そればかりでもなく、たとえばアイアンリーガーが飲むオイルの缶をルリィがみんなに渡してあげる場面があると、実は設定上の缶の大きさはルリィがかかえるほど大きいんですが、演出上は「はいっ」と渡してあげたいじゃないですか。そういう場合は少し缶を小さめに設定してあげたりしました。人間がいて同時にリーガーがいる場面があると、頭の大きさが全然違うのでレイアウトが取りにくいと現場はよく言っていました。
またサンライズ作品にしては世界設定が厳密ではないんですよ(笑)。オープニングの絵コンテを切った赤根和樹さんから「このアイアンリーガーたちの動力はどうなっているの?」と聞かれて「たぶん、あるにはありますが、とりあえず熱いハートで動いています!」と答えたら「メカもののサンライズがそれで良いのか~!」と(笑)。「SDメカなんですけど、熱い真剣勝負なんだ」という部分をスタッフに理解していただくのが大変だったのを覚えています。

中山個人的には『疾風!アイアンリーガー』があり『機動武闘伝Gガンダム』があったからこそ『天空のエスカフローネ』ができたと思うんです。なぜなら前2作のアフレコ現場は男ばっかりなんですよ。しかも男子体育会系ノリ(笑)。南さんと「女子高生とか良いっすよね」とぼやいていたら『天空のエスカフローネ』がスタートしました(笑)。そうしたら、それまで声優さんとの飲み会や旅行に「浩太郎、来る?」と呼んでくれたのに「エスカフローネ」からは呼んでくれなくなっちゃった(笑)。

最後に、中山さんにとって『疾風!アイアンリーガー』とは、どんな作品ですか?

中山自分の作品づくりの原点ですね。初めて制作進行をやった作品や、初めて企画担当をやった作品など、それぞれありますが、『疾風!アイアンリーガー』は、企画という立場で仕事をさせていただいている今の自分にとって作品づくりの原点の作品だと言えます。

2002年6月20日(木)取材。

プロフィール

中山浩太郎
1967年千葉県生まれ。
初仕事は「機動戦士ガンダム0080」制作進行。
以後「疾風!アイアンリーガー」設定制作などを
経て、企画担当として「機動武闘伝Gガンダム」、
「無限のリヴァイアス」、「WitchHunterRobin」
などを担当。
現在はフリーのアニメーション企画プロデューサーとして活動中。